4年前のある日、当時東大大学院生だった渡辺 剛志は、千葉県船橋市の中山競馬場に年末の有馬記念レースを観戦しに行きました。ギャンブルをして儲けたかったわけではなく、競馬場とはどんな場所なのか、また、競馬とはどんなものなのか体験したいという純粋な興味からです。
競馬場を訪れたのはそんな軽い気持ちからでしたが、渡辺氏は半年後には競馬が好きになり、すっかりギャンブルとして競馬を楽しむようになっていました。渡辺氏は大学で機械学習と分析を専攻してました。「AIは世界中でスポーツの予想に応用されている。ならば、その技術を競馬のレース予想に応用できないか」と考えるようになるのは、自然な流れでした。こうして、彼は人工知能(AI)の競馬予想システムの開発に着手したのです。
渡辺氏はまず、できるだけたくさんの過去データを集めることから始めました。約10年分のレース結果や天候、競馬場の状況など、さまざまなデータをAIにフィードします。そのデータを分析することで、どの馬が勝つ可能性が高いかを予測するシステムを構築しました。「予想のプロセスは、人間がやっていることとほぼ同じです。しかし、最大の違いは、AIが膨大なデータを分析して傾向を見つけることができることです」と渡辺氏は説明します。
そうして公開したのが、競馬予想AIサービス「AI RINGO」です。
渡辺氏によると、AI RINGOが重視しているのは、レース勝敗の単なる予想ではなく、ベッターがどれだけリターンを得られるかだといいます。
「ベットで勝つだけなら、上位のお気に入りの馬に賭けることができます。8~9割は勝てるかもしれませんが、それらのベットのリターン率は低いです。」と渡辺氏は言います。「しかし、勝率が50%程度でペイアウトが3対1の場合でも、大きなリターンを得られるチャンスがあります。私たちはそういった還元率をむしろ重視し、ベッターに有益になるシステムを意識して開発しています。」
「メジャーレースは情報量が多いので、ローカルレースはメジャーレースよりも還元率が高い傾向にあります。その方が予想がしやすい」と渡辺氏。「しかし、まだAI予想が一般的ではない地方レースでは、良いリターンが見られる可能性がある」
また、AI競馬予想はデータを元にしているので、重要なデータを選ぶことが重要とのこと。
「持っているデータをすべて入れるわけにはいきません。まずはデータを “クリーン化 “しなければならない」。「データのクリーン化」とは、不要なデータを捨て、重要なデータを残すことを指します。効果的に行うためには競馬の知識が必要で、これがAI予想の中で最も難しいところです。
渡辺氏は、AI予想の人気が高まり、より正確な予想ができるようになることを期待しています。しかし、残念ながら、予想の精度が上がるとオッズが下がり、リターンが減り、AI Ringoは顧客を失う可能性があります。
それでも、渡辺氏は、「システムをより使いやすく、価値のあるものにしていきます。お客様の中には、自分の予想をするための足掛かりが欲しいから、予想だけでなく、予想がどのように行われたのかを知りたいとおっしゃる方もいます。予測ができるまでの過程を説明しているAI予測サービスはあまりないと思います。」
「お客様が必要としているものを提供して、頼りになる競馬の情報源になりたい」 と語ります。「それが我々の生き残り方になります。」
現在渡辺氏は、AI・Webサービスの開発・運営及びコンサルティング会社であるRHT LCCを代表取締役社長として運営しています。ユーザーを第一に考える開発会社であるRHT LCCから、今後も目が離せません。